だが、心配な事があった…お客のことだった。 マーケット・バスケットで買い物ができないと生活に困る人が出てしまう。 しかし、ストライキを決行しなければ、自分たちが今までやってきたサービスは永遠に失われてしまう。
さらに…本当に物流を止めることができるのかという心配もあった。 ストライキを有効なものにする為には、物流センターで働く700名の従業員たちのうち、できるだけ多くの協力が必要だった。
だが、新しい経営者から全従業員にあるメールが送られていた。
『これからもマーケット・バスケットで働きたいかどうかを決めるのはあなた方それぞれです。もし仕事を放棄するなら、別の人と交代させるしか我々に選択肢はありません』
つまり、ストライキに参加した場合、クビにするという脅しだった。
従業員にとってこの店での仕事は大事な生活の糧、失うわけにはいかない。 果たして何人が賛同してくれるのか? すると…ほとんどの従業員が、ストライキに参加の意思を表明した。
翌日、物流センターのトラックは殆どの荷物を運ばなかった。 ついに、元社長を取り戻す為のかつてないストライキが始まったのだ! ストライキに賛同しなかった社員によって、多少の商品は配送されたが、人数が少数だったため、品不足は解消されず…マーケット・バスケットの店舗からは徐々に商品が消えていった。
この事態を受け、新経営陣は新たな判断を下す。 物流センター長他、幹部たち8名に解雇通知を出したのだ。 首謀者をクビにすれば、ストライキを終わりにすることができる、との判断からだった。
だがその頃、店舗のあちこちで驚くべき行動が広がっていた。 それを行ったのは、店で働くレジ係や袋詰係、調理担当など、現場で働く従業員たちだった。 彼らは、アーサー・Tをクビにしたことへの抗議の意思をポスターなどにして、訪れる客たちの見える場所に張り出したのだ。 中には、社長を取り戻すため、クビになるのを覚悟で不買運動を呼びかける者もいた。
ところがそんな彼らの行動に待ったをかけるように、ある発表がなされる。
『一刻も早く職場に復帰してください。今働いている従業員及び復帰した従業員の中から、店長他のポストの募集を開始します。また復帰した従業員には何らペナルティはありません。』
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